仙台から持ち帰った、中村元『東洋のこころ』を読み終わった。
中村が、テレビ番組で鎌倉時代の仏僧である忍性律師について語っている映像を見たことがある。忍性のことは知らなかった。類をみない慈悲のひとで、貧しい人やハンセン病患者、非人などを保護する施設をつくり、動物にも衣を与えたりしたという。忍性がつくったとされる、奈良の北山十八間戸という、丘の上にあるハンセン病患者のための療養施設。そこからは興福寺や法隆寺がみえて、外を眺める患者の心が慰められるようにという思いがこめられていたんでしょうだとか、忍性律師が患者をおぶって、丘を下ってともに奈良の市街に買い物に行ったのだとか、忍性について話し続ける中村の声はうるんでいた。他者がもたらしてくれた(広義の)教えに都度新鮮に驚異し、涙が出てくるということ。