4/20
HIPHOP、DISCOなどジャンル分けされ、何段か重ねられたLPラック。テレビ台の下に、C.O.S.A .の『Girl Queen』や流線形の『TOKYO SNIPER』がディスプレイされている。その上方壁面には額縁群。絵の飾られてる家っていいね、と結城さんが言った。
荷物を下ろした結城さんとヨシタカさんが、早速シーシャスタンドやフレーバーを並べはじめる。うろうろ周りを歩いていたら、座ってていいよ、と言われたのでソファーに腰かけた。台所で、ヒートマネジメントをあれこれ準備している二人。ちょうどソファーは台所に背を向ける形で置かれていて、そこにキンスキーさんと並んで座っていた。背後から、友達がシーシャ作るとこに初めて居合わせてるのに驚くほどの無関心、と呆れられる。二人して移動してスマホカメラを向けたら、工場見学しにきた人みたいな形式的な撮影、と呆れられる。
キンスキー家の猫、あんこちゃんが膝の上に座る。キンスキーさんにああ〜黒い服着て来ちゃって、と言われて、ああ毛が、と気づく。今年の花粉症の時期がはじまるころに初めてアレルギー抗体の検査をしたら、自分の猫アレルギーは思い込みであったことが証明された。
実家に帰ると、きまって鼻水がとまらなくなるのは、そうすると何だったのだろう。石巻の実家では、自分が中学を卒業するころからノルウェージャンフォレストキャットを飼っていた。異常に毛の多い種で、異常に大人しかった。性格が似ているからという理由で、父親がどういうわけか自分と猫の名前を呼び間違うことがあった。あんこちゃんのように人の膝の上に乗って眠るなんてこと、あっただろうか。父親にはそうしていたのだろうか。猫は大震災を生き延び、父親と同じ年にこの世を去った。
あんこちゃんは結城さんの膝の上にも乗り、ヨシタカさんに腹を見せて遊びに誘う。三人とも、キンスキー家に招かれる者としてお墨付きが出たということになるか。
LPをセレクトするキンスキーさん。一曲気に入ったやつをかけては、またすぐLPラックの前に立つ。とっくにいい気分になっていたが、全部いい曲がかかるからますます楽しくてずっと体をゆすっていた。『不定職者』の16FLIP REMIX、SEEDAのフックを結城さんが復唱する(よく考えると、とくに歌いたいとは思わないフック)。終電があやしくなり、タクシーで駅へ。ほとんど大学生のような一日。
できすぎた話だが、この日の夜、実家の猫の夢を見た。
4/23
吉祥寺の防破提まで古本を売りに行く。本運びの肉体疲労の対価に8400円を得る。古本を売った直後だけはとみに財布の紐が固くなるので、とても好きな書店だが、申し訳ないことにあまり本を買ったことがない。郡司ぺギオ幸夫『やってくる』を買うか迷い、今日も買わず。
西荻窪に移動。先週初めて入って、いいなと思っていたカフェを再訪した。ポストクラシカルの静かなBGMがかかっていたが、男性客がPCを取り出すと、シームレスにボーカルありの曲に切り替わる。Iron&Wineというセレクトもちょうどいい。
二時間ほど作業して、帰ろうと顔を上げたら全く予期していなかった雨降り。どうしよう、と思うまもなく、それを察したのか、オーナーが出口前に傘の入った傘台を運んでいるのが目に入る。ヤフー天気ではすぐに止むような雲行きの予報だが、実際にはどん曇り。どうしようもなく座って待っていると、数分経ってオーナーが「もしかして、雨待ちですか?」と、ごく自然にボールを投げてくれる。ありがたく傘を借りた。ここには今後、ずっと通うことになるのだろう。