6/4、6、8 道劇

6月4日

大和の週と違って、あまり上手に寝られない日が多い。正直な身体は、楽しい週を終えればすぐ元に戻る。今週の道劇はアテンド予定があるので、予習も兼ねて日曜日にまず1回行くことに。気持ち早めに家を出たつもりだったが整理券は16番。看板下で待っている客の塊のなかに、見知った顔が。いとーである。五頭楽日、道玄坂上ってるとき二十秒くらい声もかけずに並走してきたのキモかったな、と改めて思い出すなどする。11時半開店のお店で悠長にデザートに桃のタルトたべたいわね、などと二人して注文したらなかなか出て来ず、いきなり開演直前暗転中着席迷惑客になるところだった。
ささきさんの本人曰くシンプルな新作は、大和の楽日に観たときから印象が変わってきた。M3、髪型を変えれば…という歌詞の後、本舞台端で高めの位置に作ったツインテールのゴムを外し、わしゃわしゃと手櫛で整える。ささきさんにしては珍しい髪型で、いつもと印象を違えて背中の上にゆるやかに髪が拡がっている。その後、透過性のあるヴェールを袖からゆっくりと引き出すようにし、両肩にかけて振り返ると陰毛がパッと目に飛び込む。髪の毛を好ましく観たあとだからなのか、その視覚的類似性が韻を踏むようにして、良きものとして目に入ってくるよう。立ち上がりでは、通常のポーズの後に先ほどのヴェールを扱うシークエンスが入る。結城さんが話していたように、このヴェールは裸の皮膚のメタファーとしてもはたらくのだろう。ポーズに入る前、生地をそれこそ「袖を通す」ようにしてまとうのだが、何がしか自分にとって新奇な状況や事柄がとてもフィットしている(例えば、買い換えた釣り竿がすごく身体に馴染むとか、このビートに乗って踊っていると気持ちいいだとか)ことをありのままに愉しむ、そんな想像がはたらく余地がある。ポーズに入り、ヴェールを手足で張るようにして扱うと、より直感的に、身体の境界をなす皮膚の拡張が示唆される。ヴェールを纏った裸の皮膚はポーズのタイム感において生成変化し、その境界のゆらぎが、ささきさんの身体をいまここにおいて観ることを、とても豊かなものにしてくれる。
宇佐美さん。4月には既に出ていた『H4U』、初見だったがすごかった。M1-2の立ち踊り、ビートに身を任せながら観ていると、振り付けの音取りのディテールにいちいち感心。ささきさんもそうだが、ここまで音楽に浸らせてくれる踊りを見せてくれて本当に感激する。そして立ち上がり。この曲のここしかない、という部分で衣装を投げやり、三つ、とてつもない重みを残しながらポーズを切っていく。圧巻。3回で帰ろうかと思っていたが今日のうさちゃんは最後まで見た方がいいに決まっとるとなり、最終回にはいとーと共に最高の『サマーチュール』開きができた。

6日。蔵前で用事の後渋谷に着くと、予報よりも早い雨。友人のさゆたろさんが久々に道劇に来るので、雨宿りに109をぶらぶらしながら待つ。やがて、Mschfのコーチジャケットに黒バケハのギャルが笑顔で現れた。3回目の『H4U』になんとか間に合い、予想通りブチ上がってくれてポラ列に。ティントを塗り直すさゆたろさんを見て、9頭アゲハさんと写真を撮った日の列でもそうしていたのを思い出す(あの頃はポラでマスクが取れなかったのだった)。「バイブス太郎」の異名を取るコミュ力おばけの登場で、とくに聞いてない爪の話をしはじめたりと宇佐美さんの喋りのテンションもおかしいことになっていた。ささきさんを観てから、宇佐美さんに書いた手紙を捨てようかなと一日中ごちゃごちゃ言ってる結城さんを加えた3人で、ようこさんの焼きうどんを食べる。小一時間次の日にはすっかり忘れてるであろうしょうもない話に興じた後、最終回トリの爆上がり『サマーチュール』で全員アホに。M2、脚でリズムを取る振動が伝わってきたので横目でバイブス太郎の様子をうかがったら、椅子壊すんかくらいの勢いで首振ってて笑いそうになった。目の前では、この日が宇佐美なつと出逢って二周年という結城さんが個別性のある扱いを受けていて、それにもニヤニヤ。最後3人でチップ渡そうかということになり、「ルセラフィムの変な振り付け」を思わせる渡し方でチップを差し出すと、ちゃんと察して受け取ってからアホのコレオを踊るうさちゃん。帰路もみんなのおふざけツイッターが止まらない。バイブス太郎、間違いなくこのアホ楽しい日のMVPだった。

8日。ポラを預けてあるのと、今週2日ともめちゃ楽しかったのでお代わり。ささきさんの新作、ヴェールを扱うシークエンスに面白みを感じている。ディテールの変化は先週の大和からお話しするようになったACさんに聞くのが早いので、ちょくちょく疑問を投げてみたりしている。うさちゃんから返ってきた先日のさゆたろさんとの3ショットには最高の落書きが添えてあった。3人とも韓国語頑張ろうね…
あらきまいさん。12結の大和で少し見たくらいでほとんど初見といっていいが、日曜に地下アイドル風の演目で宣伝のビラみたいなものを渡されるという契機もありポラに。陰毛がかわいくて陰毛出しポラを2まいまい撮った。1回目の『Passion』は自分好みのジェンダー交錯もの。平山さんのデカ目の音量で、ラテンポップスをバカスカ身体に打ち込まれるのも気持ち良い。M1とM2は単に踊り手の服装が入れ替わるというだけなのだが、ベッドではお尻をつきコルドベス帽で顔を隠しながら脚を動かしたり、あるいはコルドベスを下に覆い被さるようにして、ソフトなエアーセックスと受け取れるような動きをしたりする。このコルドベスは舞台上で男女の絡みを表現する上で男性のジェンダー記号を担っていると同時に、ベッド中ほぼ全ての時間にわたってあらきさんの表情を隠しつづける道具でもある。表情の秘匿にここまでこだわっているのだから、もっぱら羞恥ばかりを読み取るわけにもいかなくなる。多くの人は演者の顔というか表情を見ている時間が圧倒的に長いと思うのだが、それがあからさまに隠されてあるとき、その人にどう向き合うのか。2回しか見ていないし何か言えるわけでもないが、再見したい演目になった。また、あらきさんのオープン曲が自分の最も好きなきららさんの演目の立ち上がり(自己言及的な曲名でもある)と被ることもあり、それが今週道劇で流れるということにしんみりしつつ、あらきさんが穴を埋めてくれたことをありがたく思った。

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