2/19 大和ミュージック

13時ぎりぎりに劇場に着くと、明朝体で32、と書かれた紙切れを渡される。いっさい関心がないので、今日が抽選会ということを失念していた。32番目、ということだから平日にしてはそれなりの入り。30番、33番、と自分をかすめるように数字が読み上げられていく。隣に座っていた13さんにも招待券が当たる。当選者はしゃべくり合っていて、だれ一人合ポラに並ばない。平日の大和らしい、弛緩したのどかな空気。

花森さんが今週も素晴らしかった。楽前は見れなかったが『グレイテストショーマン』では銀幕をバックに踊り、回転盆を回して肌を晒せば、本舞台との距離の遠さにも関わらず同期的に身体を揺らしてしまう。投光さんとの息も合った舞台の使い倒しよう。大和の長い花道を練り歩いてくるのが、こんなに似合う人もいない。一番を務める時、開演アナウンスの最中にストレッチをしている姿が好きだなと思う。本番に向かうということは、この後に来る決められたプロセスに自らを最適化するよう構えをセットしていくことではなく、予期の及ばない経験への飛び込みに身体を開いていく=ストレッチして受け容れていくようなことのほうが、より近い様態だろう。

アゲハさんの『Turandot』。最奥正面で見ていた時は気づかなかったが、最終回は下手から観ていて大きい手応えがあった。M4ベッド終わりに花道から盆入りし、片膝をつきながら唐傘を前方に向けて回し、最後は前方に肩に引っかけて静止して曲転換となる。この部分が、今週は無音部分も傘を持っていないほうの上肢(これまでは膝の上に置かれていた)の動きを止めないまま、ゆっくり膝を通り越した後に顔の前に戻してくるようなシークエンスに変更されていた。唐傘の回転の力動がそのまま損なわれずに、立ち上がりの昂揚に繋がっていく。M5最初のドロップ部分で唐傘を持ち上げながらのポーズがあるが、上肢の運動が加わったことによって、水平→垂直方向への力動の移行、回転を伴うせり上がりを再帰的に感じられるラインが引かれ、それに気づかされるようになった感じ(これまでは、曲間の静止によってこの動勢が潜在的に切断されていたともいえる)。道具づかいの効果を何倍にもアンプリファイする、相当いい変更に感じた。

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