2/28 ライブシアター栗橋

朝の湘南新宿ライン。池袋で人がたくさん降りて、ようやく座ってAirPodsを耳に入れた。今日リリースの柴田聡子『Your Favorite Things』を聴きながら栗橋へ。

イベントも何もない日なのに、二回目には四列目までそれなりに席の埋まる盛況だった劇場。みんな前日、前々日の雨と強風を避けてのことなのか。確かに、雨の日の栗橋は外のベンチで過ごすのに難儀するし(自分はめったに外出しないが)、ベイシアに行く気も起こらない。栗橋という場所とベンチに座って見上げる快晴の空は、自分の中で強く紐づいている。それをいまだ分かちがたいものにしているのは、三年前初めて訪れた日、「日焼けしちゃいませんか」と不意に投げかけられた、鈴の鳴ったかのような友坂さんの声だろう。

三番目の凛さん。デビュー週を観た平岡さんが気に入っているとTwitterで言っていて、今日楽しみにしていた。一回目『デビュー作』。大きめに腕を後方に振り切ったりワンステップの幅が広めの振り付けが多くて、それが凛さんの背丈や身体つきにとても合っている。サビで一拍、唇を尖らせておどけるような部分がスパイスになっているが、ひょうきんさがむしろ本領らしい、ということも後々解る。また、客席に対しての目線の投げかけも常に絶やさない。踊りながら本舞台と盆のギリギリまでせり出してきてのそれだから、場内を巻き込んでいこうという意志がポジティブに働いていく。二回目の『カレー』なる新作は、凛さんのステージングが客席に及ぼすこうした作用とカレーから喚起される様々なイメージの使いこなしがうまくはまる、ブチ上げな演目構成になっていた。ポーズもまた良くて、体型はそこまで似通っていないものの、完全にのばらさんを想起させるダイナミックさで決まるときがあって感激する。同じ道劇の新人、綿貫さんもちゃんと観れていないが自分の周りでは評判が良くて、3中の道劇行ってみるのもいいかもしれないと思い始めた。

そしてささきさん。この間、結城さん・武藤さんと話す機会があって、自分は『ムーブオン』の話ばかりしていたと思う。昨年6頭道劇の記録を見返すと、意外にも歌詞、という言語的なとっかかりから観ている。確かにM3、髪をほどいて〜という歌詞に当てて(実際にはそのタイミングはまちまちで、当てて、というほどでもないのだが、その動作の際には歌詞の聴覚的記憶が残響している)髪の両側のゴムを外し、わしゃわしゃと手櫛で梳く動作、そして拡がる髪が、いつも演目への深い没入の契機になる。続いて袖の椅子にかけられた透過性の高い生地を引き出してきて、身に纏って目を閉じた状態で曲転換となり、M4で目を開き、ゆっくりと歩みはじめ、生地のかかった上肢を開きながら盆に入っていく。そのひらかれ/ほどかれのありようを見ることにおいて、気持ちいいってこういうことなのか、と感得すること、いや感得のまえに、涙がもう出ている。この立ち上がりの、何がしか動作の完了を企図するような動き(=意味)の不在。足の指で生地をひっかけてポーズを切ることにも、端を指にひっかけたまま生地の反対側を空に投げて掴みなおすことにも、なんの意味もないだろう。身体と運動のあらわれ、道具との絡み合いのうちに生じるその変容のありさまをただ受け取っている。家でも何百回と聴いているにも関わらず、どういうわけか、この立ち上がり曲の歌詞って全く頭に入ってこない。演目を見ているときも、図(ささきさんの踊り)に対して音楽が地として働いている…という感じでもなく、音響の快としてただ身体に入っているのだろう、というような。ストリップの快楽をここまでの強度で教えてくれる演目を、ほかに知らない。
二回目のポラで、最近練習?しているポーズを鏡越しで撮りたいと思ってオーダーしたらこちらの意図が伝わらなくて、微妙な終わり方でまた渋谷で、となったのだが、まあいいか、となる。変な話でもないので言うと、これだけステージに魅了されていながら、ささきさんに対する執着って全くといっていいほどない。行の途上の道すがら、他の仏僧と会って挨拶を交わすような何でもなさ。明らかに好きな踊り子さんの一人なのだが、他者に対する好意って、いったいなんなのか。

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