11/22栗橋 11/23『ヌード・アット・ハート』

 

『ヌード・アット・ハート』を観にいく。日仏学院ではないほうのアテネフランセ、地図で見ると水道橋駅から一本道なので安心しきっていたが、駅で出口を間違えてすべてが狂う。迷子になり、余計な回り道を繰り返しながら到着。たまたまタイミングのかぶった結城さんと並んでの入場。アゲハさんが出演しているということが観にいく動因だったが、観たことのある踊り子さん(の数年前の姿)、舞台を既に去っている踊り子さんたちが、自分もそこで時間を過ごしたことのある劇場、もうなくなってしまった劇場で、現実に生を営んでいたことを見知る機会がこうして残っているということに、言いようのない思いがこみ上げた。6中の栗橋、通路で開演を待っているときに話しかけてきた山本さんというお客さんが、若尾さんの写真を指差しながら、この方は本当にすごい方でしたよ、と話してくれたことを思い出した(山本さん、その後きららさんに繰り返し乳首ギターをやらされていた)。

ところで序盤、ある踊り子さんの発話の中に出てくる「心は裸」、というフレーズに即して、それでも裸というのは、舞台においては踊り子その人のなにもかもが生(き)なのではない、というような補足がなされる。そこで、前日に栗橋で観たばかりの、ひとみさんの周年作『10年目』のことを思わずにはいられなかった。踊り子のアイデンティティの危機、という主題から、Kuuさんが5月頃に出していた演目をすぐに想起したが、Kuuさんが口を真一文字に結んだまま踊り続けるのとは対称的に、ひとみさんは演目の展開に沿って心模様を示すように、情感を前面に出して演じる。普段から劇場で話し、ツイートを読み、トークイベントでもお話を聞き、なおかつ文フリの『黒井ひとみの紙』を読んだうえで、『10年目』を自己言及的なものとして受け止めずに観ることは、相当難しいのではないだろうか。他方、アイドルファンとしての末期にそうであったように、素直にステージ上の姿を生(き)のものとして受け止めて心打たれるということに、何かやましさを抱いてしまうような心の動きがあるのも確かだった。どう観たらいいか考えあぐね、エクストリーム遠征でやってきているいとーにも所感を話したりして、その後はずっとひとみさんの顔を見続けていた。こうして葛藤の揺れ動きが生じて行為を左右されていること自体、引っかかりつつも感じ入る部分があることの証左でもある。楽日には『10年目』は40回演じられることになるが、その40回目を観るとき、私にどのような変容がもたらされるだろうか。

順番が前後するが、3番めののばらさん、初見の『ボディコン!』と『BAT』(12/1演目名修正、以下同)とも立ち上がりに目を瞠る。後者の『BAT』の立ち上がりでは、フォーエイトの3拍目のタイミングでポーズが二度切られる。通常ポーズが切られる(ことが多いと想定されている)のとは異なるタイミングに、ズレの感覚が残される(12/1追記、続くエルでは、それよりも一拍早めに脚を跳ね上げるような手振りを加えた爽快極まりないポーズがあり、これも引っかかりになっている)。その後、1拍目の入りにポーズのタイミングが変わった後、大サビで入る余剰の小節(ワンエンツーエン)に続いてのポーズ。これは大サビの1拍目であると同時に、余剰の小節から数えればフォーエイト3拍目にも当たる(体感としては3拍目のタイム感またきた、という感覚が強かった)。大サビの部分で、それまで入れ替わり知覚してきたポーズのタイム感が統合していくような身体的な快さがあった。記述しようとするとどうしても説明的になってしまうので、観て、としか言えないが…3回目の『JOY』も、平日の場内のやや沈滞がちな空気を変えてしまうような起爆力があった。

トリのせりなさん、3個出し。栗橋だと『ポリゴンウェイブ』のM2、リーチの長い後方への移動の振付のところが段差のせいで勢いが減衰されてしまうなとか、とはいえ、ぼおっとした青みとスモークの向こうでデカい四つ打ちのベース音に合わせて動き始めるところがいつにも増して印象的だったり、輝く星空、という歌詞に文字通りの振り当てをする立ち上がりの一場面も、その手の先に天井鏡があることで、こちらからは見れないせりなさんの視界に想像が及んだりする。当たり前のことではあるが、いくつもの場所で同じ演目を観ることによって新たな感触が生まれることに小さな喜びを感じる。初めてストリップを観た日は、同じ演目を二度観ても、違いを何ひとつ感じ取ることができなかった。

3回目のポラ中、次の演目迷ってて、という声が聞こえてくる。聞いてみると初日の『ゴルフ』、ボールがうまく飛んでくれなかったらしい。それはそれで、とポラでそれとなく推したのがわずかでも功を奏したのかは分からないが、4回目はキャディーバッグを背負って現れた。M2、高密度の立ち踊りにブチ上がり、M3(構いのシークエンス)でアホになったあと、M4でミディアムなゴスペルR&Bのなか切られていくポーズに、どういうわけか目頭が熱くなる。そして、きららさんとはまた異なったスタイルで場を巻き込んでの大団円。8中横浜のナイスショット回を観て以来、今年これほど毎回に渡って楽しませてもらった演目もない。サッカーより断然『ゴルフ』や…

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